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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 178 大原本部長との電話(18)

『うん、まあ、結果的にはひと安心だよ…』
 しかし、彼は、そんなわたしの動揺と、不惑さと、不安等には気付いてはいない。
 そしてわたしも気付かれたくはなかったのである。

「ええ」
 
『でもさぁ…』
 すると彼は突然に、昨日の夕方に、新幹線に乗ってから気付いた、という話しをしてきたのである…

『……だからさぁ、結果的には慌てて帰らなくて、今日帰っても良かったんだよ…』
 そう話す彼の顔は、電話だからもちろん顔は見えないのだが、なんとなく苦笑いを浮かべていそうな感じであった…
 
「でも、それは結果論ですよ…
 だってぇ、こうして安心できたから余計にそう思うわけであって…
 それはそれで、また、心配だったんじゃないんですかぁ?
 て、いうより、わたしが心配でイヤだったかも…ですよ」
 
 それは本音であった…
 もちろん一晩でも過ごしたかったのだが、あんな状況では本当に、わたしは落ち着かなかったであっただろうし、そう言う彼も心配だったに違いないのだ。


 だが、だけど…

 本当の本音は…

 逢って…

 抱かれて…

 愛されたかった…


 そのくらい、今や彼の存在感は、わたしの心の中では唯一無二の大切な一番の存在なのであったのだ。

 正に愛していると間違いなくいえるし、今、最も大切な、かげがえのない存在であり、存在感なのである…
 
 そして…

 絶対に失いたくはない…

 無くしたくはない…

「…でも、理由が理由ですから大丈夫です、15日の夜まで我慢します…ね」

 だが、そしてわたしは…
 そんな想いに押し潰されそうになってきている自分の心に言い聞かせる意味でも、精一杯の我慢と虚勢を張ったそんな言葉を言ったのである。

 もう今となっては、我慢するしかない…
 の、だから。

『ああ、うん…すまないな』
 すると彼はそう謝ってくる。

 だが、そうすんなり謝られてくると、少しだけわたしのお臍が曲がってきたのだ…

「でも…あれですか」

『うん?、あれって?』

「お父様の10周忌のご法事は13日ですから…
 今日は11日ですし…」

 少し浮かんだ想いを口にした…




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