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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 176 大原本部長との電話(16)

 ああ、話し浩一さんの声が聞きたい…

 声を聞いて気分を変えたい…

 わたしはそう想いながら、オペレーションルームの方をボーっと眺めていく。

 そして午後3時15分が過ぎたのを確認し、わたしは恐る恐る携帯電話の電源を入れる。
 
 あ…

 すると意外な事に、あの後に蓮からの着信履歴表示が無かった。

 だが、さっき話した内容と感じた彼の性格と雰囲気からは、そう簡単に諦める感じは無かったのだ…
 また、今後、絶対に蓮から電話が掛かってくるはずに違いない。

 わたしは急ぎ、蓮の着信履歴の番号を着信拒否設定にしていく。

 よし、これで一応、わたしの意思表示は出来たのだ…
 どうせ蓮は、こんな着信拒否設定くらいでは全く気にしない事も容易に想像できる、だが、やる事はやっておかないといけない。

「あっ」

 すると、蓮の番号の着信拒否設定が終えた途端であった。

 ブー、ブー、ブー…
 携帯電話のバイブレーションが震え出したのだ。

 ああ…
 それは、嬉しい着信であった。

「はい、ゆかりです」
 そしてわたしはワンコールで電話に出る。

 一気に胸が昂ぶっていく…

 そしてわたしは間髪を入れずに
「お母さまは大丈夫でしたか?」
 と、すかさず訊いた。

 それは本当に心配していたから…
 そしてワンコールで電話に出てしまった照れ隠しの意味もあったのだ。

『あ、いや、うん、あ、だ、大丈夫だ、ありがとう』
 すると、そう返事をしてきた彼の声が動揺した感じの声に聞こえたのである。
 わたしはその彼の声の感じに、着信の嬉しさが消え、少しドキッとしてしまう。

 え、もしかして…

「えっ、重症なんですか?」
 そして思わずそう訊いたのだ。

『あ、いや、だ、大丈夫だよ、大丈夫なんだ』
 すると慌てて彼はそう言ってきた。

「そう…なんですか?」
 だが、わたしはなんとなく、その彼の返事に懐疑的な思いを感じてしまう。

『あぁ、うん、そ、そう、本当に大丈夫なんだよ』
 だが、なんとなく、彼の声が慌てている様にも聞こえ無くはない…

「なら…いいんですけど…」
 
『いや、本当だよ、本当に大丈夫なんだよ…』
 そして彼は、おそらく担当医との会話なのであろう…
 を、わたしに話してきたのである。




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