テキストサイズ

シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 171 蓮からの電話(1)

「もしもし…ゆかり姫?…
 僕だよ……三山蓮太郎…
 あ…違う……蓮だよ…ゆかり姫…」 

 その電話は最悪な男からの着信であったのだ…

「あ…え…な、なんで?……」

 何でわたしの電話番号を知っているのか…

「ああ、うん…
 赤坂のテレビ局の総務の人から教えて貰ったんだよ…
 姫が大学の後輩で懐かしくて会いたいからって無理を言ってさぁ…」
 と、そんな事をシラッと言ってきた。

 赤坂のテレビ局の総務は、今回の
『新規業務』での担当である…
 昨年の日本アカデミー助演男優賞の俳優が、そう尋ねてきたらたいがいは教えてしまうであろう。

「でもさぁ、大変だったんだよ…
 ほらぁ、僕の中では『ゆかり姫』だけどさぁ、まさか他の人には『ゆかり姫』って訊くわけにもいかないしさぁ…
『佐々木』って苗字思い出すのに大変だったんだよ…」
 と、笑いながら言ってきた。

「そ、そうなんだ…」

 さすがに訊かれもしなければ口止めをする、いや、した訳にもいかないし…
 まさか誰もがわたしと蓮との過去の関係に、あんな黒歴史的な淫れた、乱れた、不純で危険な過去があるなんて誰も想像もつくはずがない、そして『姫』を封印して訊いたのには助かった。

 今や蓮は新進気鋭の注目と、人気のある俳優なのだ、変な勘繰りはお互いの為にはならない…

「本当に久しぶりだよねぇ…
 今までずうっとゆかり姫の事を忘れられなくてぇ、ううん、忘れる事ができなくってさぁ…」
 と、そんな調子の良い事を話してきた。

 だが、さすがに、ある意味、わたしととの過去、昔の事は、蓮には忘れられない…   
 の、であろう。


 その位、異常であり、アブノーマル的である関係の…
 つまり最悪な、不惑で真っ黒な、黒歴史そのものなのであるのだ。

「本当にあんな場所で偶然会うなんてさぁ、ホント、びっくりしたしぃ、驚いたしぃ、そして嬉しかったんだよ…」
 蓮は、こんなわたしの不惑の動揺の想い等には全く考えも、予想もせずに、対照的に明るく、嬉しそうに話してくる。

 それはそうかもしれない…

 あの昔の関係は、今となって振り返ると、わたしにとっては本当に、最悪な、真っ黒な、出来る事ならば消し去りたい位の黒歴史的な嫌な過去の思い出なのだが…







ストーリーメニュー

TOPTOPへ