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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 164 戸惑い

 その後、電車は混雑し始めてきてさっきまでの妄想をする事は無くなり、なんとか会社に到着した…
 の、だが、正直、戸惑っていた。

 さっきのあの妄想は一体何だったのだろうか…

 まさか、わたしにレズビアンの深層心理が、隠された性的嗜好というモノがあるのだろうか?…

 だが、今の今までそんな想いや欲望を感じた事がない…

 あの中等部の同級生との弄り合いは思春期に於ける性的な興味の高まりと、成長期に伴う疼きの昂ぶりによるモノであったのだと、自覚している…
 それは、相手の子には全く恋愛的な感情は無く、あくまで性的な興味からであったのだ。

 それの証拠に、その子とはお互いに性器の、クリトリスの弄り合いはしたのだが、もちろんキスや抱擁はしなかった…

 だから…

 わたしにはそんな同性愛的な嗜好等ある筈が無い…

 はずなのである…

 やはり、美冴さんという存在感のせいなのか…

 いや、そのせいに決まっているわよね…

 わたしはそう必死に想いながら、コールセンターのオペレーション室に顔を出し、各エリア、つまり、宅配便、通販、損保部門の各チーフに朝の挨拶をし、今日の当番出勤がわたしである事を伝え、そして大原本部長が部長時代に作った部長室へと入った。

「ふうぅ…」
 わたしは、部長室のデスクに座り、そんなため息をつく。

 そしてまだ戸惑いと、困惑の想いが胸を騒つかせてきていた…

 以前から、確かに綺麗な、美人な女性には気を惹かれる傾向はあったのだが、それはあくまでも自分に無い美しさや、憧れ的な想いの視線による傾向であったのだ…
 だが、今朝の電車の様に、その女性に対して性的な、同性愛的な視線や意識をして見つめ、そして妄想や想像をしての疼き、昂ぶり等などした事も記憶も無かった。

 しかもほんの一瞬だけ見えた、あんな小さなキスマークに、あんなに昂ぶってしまうなんで…

 わたしはそんな事を考えながらデスクに座り、部長室の前の透明なアクリル板を壁にした素通しの部屋の前を、何人ものスタッフが行ききするのを見つめていく。

 すると再び、ザワザワと騒めきが起きてきた…

 ヤバいわ…

 スタッフが通る度に、彼女達を注視してしまう…

 つまり、無意識にガン見してしまうのである…







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