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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 161 朝の気分転換

 そう…

 今朝のわたしのスッキリとした気分は…

 禁断の果実の味を知ってしまったかの様な想いといえる…の、かも…

 わたしはメイクを施しながら、自分の顔をドレッサーの鏡を通して見つめながらそう思っていた。

 なんとなく心もカラダも軽い…

 そして…

 まさかこれがわたしの本性なのか…

 心の奥底で望んでいた嗜好の欲望なのだろうか?…

 いや…

 いや、違う…はずだ…

 いや、たまたま…なのだ…

 昨夜は彼の突然の事情もあり、逢瀬の約束がドタキャンになってしまった…

 そしてその寂しさ、哀しさ、切なさを、美冴さんとの電話が消してくれた…
 その余韻のせいなのだ。

 いや、そうに違いない…

 そして晴れて友達になった、いや、なってくれた喜びと、嬉しさと、安心感と、信頼感と、秘かに持っている美冴さんに対しての憧れ、憧憬の想い等の様々な想いや感情が混ざり合い、それの相乗効果の挙げ句の昂ぶりと高まりの結果に過ぎないのだ…

 いや、その筈なのである…
 そうに違いないのだ。

 わたしはいつもよりやや紅味の強いルージュを塗りながら、鏡の自分にそう自問自答をしていく。

 そしていつもの出勤は、ほぼ、カッチリとした膝丈のスカートベースのややタイト気味なスーツを着ているのだが、今日は当番出勤という休日出勤であり、余程のトラブルが起きない限りはコールセンター部の営業所からは出ないのだ…
 だから、いつもとは違う、ややラフな、ハイブランドの柄のブラウスに、パープル系の色合いの七分丈のワイドパンツを履く事にした。

 これだけでも気分的には変わる…

 そして退社したら少しショッピングでもしよう…

 そして明日の美冴さんに会う事に備えよう…

 わたしはそう考えながら、出勤の身支度を整えてマンションを出る。

 あ、そうだ…

 今日はお盆休みの真っ只中だ、通勤電車も空いている筈である…
 そう想い、わたしはタクシーを乗るのを止めて、電車通勤をする事にした。

 昔は毎日朝晩、電車通勤をしていたのだが、ほぼ毎日の確率で痴漢に遭遇するのにウンザリしてタクシー通勤に代えたのである…
 それにその頃は出世に伴い、会社からもタクシーチケットを配布される様になっていたから、それに甘える事にしたのだ。

 だが、たまには…

 




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