ほしとたいようの診察室
第8章 入院生活は続く
言われるがままに胸の音を差し出すと、相変わらず吹田先生はにんまりと不敵な笑みを浮かべて言った。
「まったく、心拍速いねぇ」
「もう! からかわないでください」
たぶん、吹田先生じゃなければその手を叩き落としていた。
叩けばきっと、『のんちゃんに暴力振るわれた』とかなんとか、吹聴しそうなので、ここはグッと我慢である。
「はいはい。もう少し大きく息吸って」
吹田先生が、一瞬で真面目な顔をするので、これ以上は騒げない。むくれつつも、言われた通りに息を吸う。
「吐いて」
ゆっくりと息を吐く。
吹田先生は、少し思わしくない表情をしてから、聴診器を外した。
「ちょっと雑音気になるな……咳出る?」
全ての隠し事を許さないような目をして、わたしに問う。
隠すもなにも、調子が悪いところがないので首を横に振るが、吹田先生の追及は続く。
「息苦しい感じは?」
「ないです」
カルテにメモをとる。
「ふーん。様子見かな。……変わったことあったら、すぐ教えて」
吹田先生はそれだけ言うと、椅子から立ち上がった。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える