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ほしとたいようの診察室

第6章 回想、はじめまして


のんちゃんの涙のダムは、決壊した。こういう時は、静かに泣くらしい。
ボロボロと音もなく大粒の涙を流して、布団に潜り込むと、せめてもの抵抗を見せた。



「ゆうせんせ……きらい……」



と呟いたのは、良い根性である。




これには優先生も苦笑いを漏らし、大きなため息をひとつついた。


「嫌いでもなんでもいいけど」


少し柔らかい、いつもの声色に戻ったが、すぐに厳しい口調でのんちゃんを諭した。






「いいか? のんちゃん。大怪我じゃすまなかったかもしれないんだぞ? わかるか?」



クレンメ全開からの、転落未遂である。前代未聞の事故だ。

全開になってから誰も気づかなかったら?
頭から転落していたら?
打ちどころが悪かったら?


考えられる最悪のシナリオはいくらでも思いつくから、身震いがする。



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