ほしとたいようの診察室
第6章 回想、はじめまして
「わかんないじゃ済まさないがな。どうしてこんなことしたのか、自分の口で説明してみな」
優先生の事情聴取が始まろうとしている。
布団の山が、涙でぷるぷる震えている。
……一向に口を開かないのんちゃん。
待つ優先生も、優先生だった。
子どもだからって容赦しない。大事に至る可能性があったのだから。
猛禽類のような、厳しい眼差しは、いつものように緩まなかった。
静まり返った病室は、のんちゃんの部屋ではないみたいだった。
たったの数秒が、数分のように長く感じる。
埒が明かないと思ったのか、優先生はベッドサイドからパイプ椅子をひっぱり出した。どっかりと腰を落ち着けると、厳しい視線をのんちゃんに向けたまま、俺にこう言った。
「……のんちゃんから理由を聞くまでここにいる。悪いけど、陽太先生。午後の外来代わってくれるか? これ終わったらすぐ出る。すまんな」
これにはもう、二つ返事で承るしかない。
「承知しました」
これは、のんちゃんと優先生にとって、すごく大事な時間なんだと思った。
もはや、闘いだった。
緊張感漂う病室を先に抜け、やっとのことで息をつく。
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