ほしとたいようの診察室
第6章 回想、はじめまして
この間きっと、1秒なかったと思う。
咄嗟に駆け寄って、頭を支える。
のんちゃんの体をキャッチしたのと、
点滴スタンドが倒れて酷い音が響いたのは、同時だった。
ガッッシャーーーーン。
開け放った病室のドアから病棟の廊下に響く、派手な音。
点滴スタンドに引っ張られて、のんちゃんの腕から点滴が抜けると、血が滲み出る。
のんちゃんは、俺の腕のなか、何が起きたのかさっぱりわからない様子で、目を白黒とさせていた。
「っもう!!! 何やってんの?! 危ないでしょうが!!!!!」
反射で、腕の中の子どもを叱り飛ばす。
今度は、火がついたようにのんちゃんが泣き出す声が、腕の中でわんわんと響いた。
のんちゃん自身が、この状況を理解したらしい。
うっわ……心臓止まるかと思った。
ぎゃんぎゃん泣き喚くのんちゃんの声とは裏腹に、自分の心臓の鼓動が耳元でドクドクと鳴っていた。
腰が抜けた気がするが、そうも言っていられない。
怪我がないか、確認する。
点滴が抜けた部分だけが、痛々しい。
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