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ほしとたいようの診察室

第6章 回想、はじめまして



処置室に運ばれてきた女の子はぐったりとし、付き添いの母親らしき人物は、目に涙を溜めていた。




4歳にしては、小さく華奢な体。
それでも目一杯肩で息をして、苦しそうな女の子が、そこにはいた。

「のぞみ!! しっかりして!! ねえ!!」

……おそらく、この子にとって、痙攣は初めてのことなのだろう。

「こんにちは、のぞみちゃんの保護者の方ですね? 小児科医の澤北です。のぞみちゃん、痙攣は初めてでしたか?」

「はい…… 昨日の夕方から、熱があって」

「何度くらい?」

「37度8分……夜ご飯が食べられなくて、飲み物を少し。夜中は……」




母親から状態を聞いているうちに、少女の体がガクガクと震え出す。


またか。


「のぞみ!!!」

母親が悲痛な叫びをあげる。




震えながら、嘔吐。血圧低下、サチュレーションも下がる。


まずい。


「叶恵さん、挿管の準備して。輸液全開で」

「わかりました」

「のぞみちゃん、ごめんな、ちょっと体触るよ」


挿管のために触れた体は、湯のように熱い。

刻一刻と時間と共にサチュレーションが下がり、85%を下回った。
モニターの警告音が大きくなり、母親がパニックを起こしかけていた。




熱性痙攣で……ここまでなるか?

既往には喘息。……それ以外にも、なにか病気が隠れているだろうが、いまは状態を安定させることが先決だ。




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