
ほしとたいようの診察室
第5章 プリンを作ろう
「食堂の人たち、心配してた。でも、プリン食べさせるからって言ったら、そうしてあげてって。大河さんが」
言いつつ、優先生はプリンを食べる。
優先生の一口は大きい。
……あっという間にプリンはひとつ、空になる。
「早く良くなってさ、また仕事しよう。そのための入院なんだ。俺も、元気に働くのんちゃんが見たい」
落ち着いた声で、優先生は言った。
わたしはゆっくりと起き上がった。
大好きなプリンが、目の前にはある。
「大丈夫。食べてみな」
「でも……」
吐いちゃうかも……。
不安な表情を隠さずにいると、優先生は言った。
「小さい時からのんちゃんのこと見てるんだから。いまさら吐いても、俺も陽太先生も引かないよ。ってか引いてたら陽太先生、今日は病室来ないだろ」
優先生は新しいプリンの蓋を開け、スプーンを手に取った。
「まあそれに、そんなことで引くような後輩に育てた覚えもない」
言いながら小さなひと口を作ると、わたしの口元まで運ぶ。
「ほれ、口開けて。食べてみな」
いい匂いがして、思わず……。
ぱくっ。
「……おいしい」
久しぶりに食べたかも。
卵を多めに使ったプリン。素朴な味だけど、これが食堂ではずっと人気だし、わたしもずっと知っている味だ。
「全部食べられるか?」
「……多分」
「はい、スプーン持って」
スプーンを手渡される。
ゆっくりと、プリンを掬って、口に運ぶ。
……プリンは変わりなくおいしかった。
