
ほしとたいようの診察室
第5章 プリンを作ろう
「きもち……わるい……」
「嘔吐、多量だね」
吐物と食事量を見て、食べたものはほぼ全量吐いていることを確認する。
「まだ出る?」
陽太先生がのんちゃんの背中をさすりながら聞くと、のんちゃんは力なく首を振った。
「食べてる途中から顔面蒼白、食べたものほとんど戻したと思う。吹田先生が来る少し前から、サチュレーション下がってきた」
陽太先生が、のんちゃんの口元を拭きながら、そう説明する。
「のんちゃん、飲み物も無理そう?」
のんちゃんは、目をぎゅっとつむって頷いた。
ポロポロとこぼれる涙を、これ以上出すまいとするかのように、目を開けなかった。
苦しいはずなのに、抑えて肩で息をするだけだった。
んー、制吐剤使っても使わなくても、明日はショックで食事量が減少するだろうな……。
まあまだ入院初日だ、まだゆっくりやればいい。
これ以上、陽太先生に弱さを見せるのは、のんちゃん的につらそうだった。
「陽太先生、代わるよ、ありがとう。のんちゃん、気持ち悪いの楽になる点滴と、お鼻に酸素していくね。今夜はつけてて」
……あー、のんちゃん、心折れたかな。
のんちゃんが治療を頑張れるかどうかは、メンタル面のケアでも左右される。そこも組んでの陽太先生との夕食だったわけだが……これが裏目に出るか……?
必要な処置を施しつつ、そんなことも考える。
陽太先生は心配した顔でモニターを確認したあと、のんちゃんの病室から離れた。
