
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
そのひよりに、ゆづるは楽しい顔をさせてやれない。常日頃アルバイトに明け暮れて、昼休みや月に数回の放課後だけが彼女と共に過ごせるのに、それらの貴重な時間さえ、このところ妹の見舞いに付き合わせてばかりいる。
「ゆづるくん。手、繋いでくれない?」
「改まってどうしたの」
「うん。せっかく好きな人といられる時だし。ゆづるくんのこと、染みつけておきたくて。……有り難う」
まるで大切な忘れ物を拾い上げる塩梅で、ゆづるがひよりに応じると、青かった顔が心なしか薔薇色を帯びた。
「お礼ならオレが言いたい。ひよりみたいな可愛い子とイチャつけて、幸せ者だよ」
「可愛い……だけ?」
「優等生で賢くて、一途で多趣味」
「一途で多趣味って、矛盾してるじゃん」
「手芸部と将棋部と卓球部掛け持ちって聞いたら、大抵の人はそう思うって。でも、付き合うヤツは掛け持ちしない」
「当たり前だよ。ゆづるくんが社会人になるまで、ずっと待つ。いつか二人とも自由になって、私もゆづるくんのこと支えられるようになったら、今一緒にいられない分、デートだってうんとするの」
