
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
「有り難う!ゆいかさん、やっぱりすごい!私なんかでも人形みたいに見えるんだもん……!」
ピンク色のサマードレスをこなれた風に着こなした彼女は、実際、人形顔負けだ。だのに彼女は、頑なに自身の容姿を肯定しない。なつるや椿紗、明珠など、少なくともゆいかは彼女らだけでもなずなを褒めたことがあるのを知っているのに、本人のものさしは、あのろくでもない男の言葉だけか。
「あたしの実力じゃないよ。人間、誰でも輝ける素材は持ってる。それをどう使うか使わないかで、変わるだけだよ」
「そっか、ゆいかさん……そういうお仕事されてますもんね……私みたいなお客さんにも、そうやって元気付けてあげないと、なんて大変そう……」
「なずなちゃん限定だってば。それに、仕事と言っても現場はほとんど関わらないし」
バニティポーチを片付けながら、ゆいかはここ二ヶ月と少しを振り返る。相変わらず会社でも引き受けるが、なずなを化粧することが最も多いし、彼女のために、コスメを余分に持ち歩く習慣まで付いた。彼女が鏡を覗いた時、一瞬でもその笑顔が華やぐための顔を仕上げ続ければ、いつか本当に彼女は自分を好きになるかも知れない。見た目が全てでないにしろ、見た目も含んで自己評価の低い彼女は、誰かが持ち上げてやるべきだ。
