
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
* * * * * *
反射的にその場を離れた。
ゆづるを軽蔑したわけではない。この世には一定数、やむを得ない事情を抱えた未成年がいると聞くし、高校生ならまだ尚更、稼ぎ口は限られている。扉の隙間をこぼれてきた家庭環境がゆいかの聞き違いでなければ、むしろ彼は不平も漏らさずよくやっている。
だが、自傷行為だ。
ゆいかには、苦し紛れに繋げる命が一分、一秒でも貴重だ。案件によっては、対価が僅か一時間程度という場合もある。
働かなければ生きていけない。言い換えれば、働けばいつまでも生きていける理屈だが、無駄に命を削る行為は、ゆいかにとって、嘘に塗り固めるより罪悪だ。
ゆづるが羨ましかったのかも知れない。まだ十代で病など経験したこともなく、魔法がなくても活気が有り余っている。
極度に不幸な人間は、自分にないものを持つ相手を視野から追い払うことで、心を保つことがあるという。そこまで追い詰められていた自覚はないのに、なつるとゆづるの話を意図せず立ち聞きして二週間、ゆいかは彼を避けるようになっていた。
そうして梅雨も明けた頃、彼の姿が見られないことがまた続いた。
