
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
なつるにはゆづるを咎められない。
彼の治験のアルバイトは、同意書にサインしなければならない類の、対価に見合った危険を伴う内容だ。寝たきりになった同僚もいたらしい中、悪くても彼が疾患程度で済んでいるのは、魔法少女の報酬が致死を遠ざけているからだ。加えて魔力から得る身体能力上昇効果で、治験中、ほとんど違和感もないという。
もう何度繰り返したか分からない会話の片手間、なつるはコピーにも目を通していた。
今日はもう誰も来ないだろう。
思い込んでいた矢先、なつるは第三者の視線を感じた。
「……ゆいかちゃん」
ゆいかの顔は、戸惑いとも失望ともつかない曇りに覆われていた。さしずめ人工的な人形、淡麗な顔に浮かぶ表情はいつもおおらかで、彼女にこれだけ侮蔑的な気色が出せたことに目を疑う。
まるで人間ではないものでも見るゆいかの目が、ゆづるに向いていた。
「だから……佐伯くんは、あんな戦い方が出来たんだ……」
「ゆいかちゃん、でも、ゆづるくんはその分、寿命も頑張って稼いでるから」
どこからゆいかが聞いていたのか。
なつるは、彼女にゆづるの事情が知れないよう注意していた。
生きたくても生きられないと宣告されたゆいかと、金銭的な事情があるにしても、進んで健康体を毀すゆづる。
彼女らがどう理解し合えるのだ。
