
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
「お気遣い有り難うございます。そう、天方さんに同情しても、却って失礼です。身体一つ傷付くくらい、そうしなければ衣食住もろくに出来ない俺らからすれば、家事や仕事と同じです。別に投げやりになっていない、だからこうして寿命も稼いでいるんですから」
歌う調子で話すすぐるの手首や首筋は、蚊に刺されたようにも見える痕が点在していた。中には青紫に変色しているものもあって、絆創膏の貼られた下は、人目に晒しにくい惨状になっているのだろう。
ゆづるから見たなずなの家庭環境は、確かにありきたりかも知れない。
病気がちな妹と、酒豪の父親。ゆづるが物心ついた頃、既に母親はいなかった。よその男と駆け落ちした彼女の代わりに妹を世話して、小学校に上がる頃には、彼が生活費を工面していた。少年愛好家の男に売春させるため、父親はゆづるに必要以上の筋肉を付けさせなかったし、その痩せ細った肉体のまま、中学に進学したあとは、知人の営む夜間の工場に勤務していた。
「高校まで生きられただけで、儲かったと思っています。いっそ早く生まれ変わって、愛でられるだけの犬や猫として新しい人生を始めた方が良かったかも知れませんが」
「飼われるとは限らないわよ。そういう子達は売れ残ったら、……問題になってるじゃない」
「もちろん例え話です。高校生になって仕事の選択肢も増えましたし、治験バイトと魔法少女。運良く黄金の組み合わせにありつけました。高額な治験で死にかけても、死なない。それに、ひよりが彼女になってくれて、少しは楽しみが出来ましたしね」
