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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は


* * * * * *

 佐伯ゆづるという高校生がルシナメローゼに入った頃、なつるには、既に魔法少女の仕事が定着していた。

 脆弱で、ことごとく運に見放されたようなゆづるにつきまとった負の雰囲気は、それまでにもなつるが見てきた多くの魔法少女達に通じているものがある。

 椿紗の事務所を見付け当てる人間は、なつるがスカウトする場合を除けば、オカルトに精通しているか、特殊な事情を抱えているかだ。

 ゆづるも例に漏れなかった。

 高時給、加えて死相を排斥出来るだけの対価を必要としていた彼は、それらを湯水のように浪費しながら、生来の刺々しさは日を追うごとに尖りを増して、顔にはいつでも余裕がない。
 きっと学校でも友人がいない、いじめの標的ではないか。
 ゆづるに関するそうしたなつるの推測は、見事に外れた。

 実際はやんちゃなグループにいるらしい。そこでの友人達との関係は、極めて良好で対等だった。一つ歳下の恋人は、大人のなつるから見ても愛らしく気性も穏やかで、彼の異性装にも理解がある。


 つまりゆづるは恵まれていた。あれだけ暗く卑屈になる要因は、ないはずだった。


 彼はなつるがスカウトしたのではない。つまり何も知らなかったなつるが異変に気付いたのは、働いて報酬を得ているはずの彼に死相が見えた時だった。

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