
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
「一週間、夢みたいに楽しくて幸せでした。すぐるくんは学校の休み時間ごとに電話をかけてきてくれて、ビデオ通話してくれて、アルバイトも休んで付きっきりでいてくれました。買ってきてくれる食材は、私の好きなものばかり。ゆいかさんと買い物行った時のお洋服だって、褒めてくれたのに……」
「なずなちゃんも、いつまでも学校を休んでいるわけにいかない。それを言ったら、本性を現したっていうわけね」
「私がつけ上がっただけです、すぐるくんは悪くないです。何でもわがまま言えって、本当に優しかったのに、困らせるようなこと言わないで、最後まで楽しいデートに出来なかった私のせいです」
夕飯の間、明珠はこの場にいない大学生に、彼女の思い付く限りだろう悪態をついた。
なずなの両親は当てにならない。すぐるも異常な男だったが、彼女の実家も同等だ。なずなほど利他的で謙虚な人間は、なかなかいない。人懐っこく、通っている大学もそこそこ名が知れている。彼女ならすぐるに頼らない方が、将来の選択肢も広がるだろう。何も出来ないのではない、何もさせてもらえなかったのだ。
ホットヨガのシャワールームで、ゆいかと明珠は、なずなよりひと足先に着替えを済ませた。
閉店間際のショッピングモールに駆け込んで、彼女が買い揃えてくれていたのは、修学旅行以来に袖を通すようなシンプルなTシャツとハーフパンツだ。下着のサイズが合わないのは、誤差の程度。
パウダールームで、ドライヤーを任せて欲しいという彼女の言葉に甘えることにしたゆいかは、まだ個室にいるなずなの話を持ち出した。
