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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は



 明樹が電話をかけたのは、彼女がこの近くに経営しているホットヨガのスタジオだ。平日は深夜近くまで営業していても、客足は夕方を過ぎると落ち着く。


 残業など辞書にもないオフィスに行くと、幻聴でも聞こえてきそうにしんとしていた。
 昼間は田中や明園達が和気藹々としている仕事場は、階下に明珠らがいなければ、まるで夜の学校だ。実際に夜の学校に侵入した経験はないが、そうしたものを題材にしたホラー映画や漫画があるほどだから、これくらい不気味なのだろう。

 カップスープに湯を注いで、早々に引き返すと、会議室ではなずなが明珠にあんな事態に至った経緯を話していた。

 なずなと初めて逢った夜を思い出す。副業の同僚になってから、ゆいかは彼女の活気に溢れる凛々しい一面ばかり見てきたからか、彼女が並外れてしおらしかったことを忘れていた。


 すぐるがなずなに外出禁止を言い渡したのは、以前に増して、彼女の行動が不明瞭になったからだった。

 学校関係をカモフラージュにするにしても、限界がある。だが彼の目の届くところにいさえすれば、居心地は悪くなかったという。むしろ彼は、交際を始めた頃くらいの明るさを戻して、準備万端のデートになずなを連れ出しもした。

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