
副業は魔法少女ッ!
第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世
「お姉さんこそお洒落で絵も上手くてすごい。二次創作ですか?」
「はい。こっちはそうで、この辺りはオリジナルです。お姉さん、アニメはあまり観ない人ですか」
「すみません。魔法少女にはぼんやりとした憧れがあって、昔観たものも思い出せなくて……」
「たくさんありますし、仕方ないです。それに小さい頃は一度くらい観るものですし、その頃の憧れが今も続いているって素敵です。良かったら、同人誌ですけど差し上げます。お勧めなので、気になったら本編のアニメ、無料話数だけでも良いので観てみて下さい」
莫大な時間や制作費を注いだだろう頒布物を、こうして無償で持たせてくれる売り子は屡々いた。その度に、なずなは気の毒になって、追加でいくらかの本や絵を購入しては、彼女らの知識から昨今の魔法少女作品に関する情報量も増やしていった。中にはかなりの年長者もいた。彼らの知識はなずなを圧倒させるものだった。
会場に入った時間、黄金色の日差しはまだ柔らかだった。初夏と呼ぶには気が早いにしても、ようやくアウター必須の装いから解放されたのもあって、空が青いだけで心が弾んだ。
それがアフターイベントのプレゼント抽選会まで参加して外に出ると、夕方の色合いが差し迫っていた。
