
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
ゆづるの主張も間違いではない。魔法少女の報酬は、お金と寿命だ。護身に必要な魔法を備えない彼は、致命傷を負ってもすぐに手当て出来ないし、単身で行う業務であれば、尚更、安全確保より攻撃に専念しなければ効率が悪い。
「寿命って、どこから入ってきてるんでしょうね」
死相が出ていた頃のゆいかより、ゆづるは儚い。壊れかけのガラス細工にも似た少年は、それでいてなつるよりずっと大人びている。彼の引いた暗黙の線を跨いだ侵入者は、鉄柵の棘に血を流すだろう。
寿命の出どころは、椿紗の魔力だ。彼女の古い友人は霊能力者で、その友人の手解きを受けて、ルシナメローゼを設立したと聞いている。
「そんなにすごい霊能力者が、ネットにも出たことないって、おかしくないですか」
「亡くなったそうだから……」
「それでもです。ルシナメローゼだって、聞いたことがありません」
上手く話題を逸らされた、とはっとした時、事務所の裏手の斜向かいにある自宅へ帰っていた椿紗が戻った。
