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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は


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 今日の業務になずながいればとあまりに思い描いていたせいか、なつるは彼女の数時間先の光景を見た。予知は明瞭なこともあれば、抽象的な時もある。今しがたのは後者だったが、自分よりゆいかを行かせるのが賢明ということだけは分かった。

 生に執着するゆいかと真逆で、なつるの最年少の後輩は、まるで死に急いでいる。
 世を儚んでも、不満があるのでもない。初めから期待も希望も見出していない彼に、おそらく絶望の概念はない。

 だがなつるには、アルバイトリーダーとして、苦言しておく義務がある。


「とは言われても、瓜生さんだって捕まっていましたよね。やってたことは同じですし、俺は機転を利かせただけです」

「私は……、うっかりしていて」

「上司がしくじった時の言い訳ですよ。瓜生先輩せっかく優しいんですし、反面教師の真似しちゃダメです」

「ゆづるくん──…」

「それに、死にかけたって給料入れば補充出来ます。そのためにここのバイトしてるんですから」


 ゆづるはウィッグと化粧を落とし終えていた。男にしては小柄な体格である彼は、サーモンピンクの魔法少女衣装も全く違和感なく着こなす一方で、地元の市立高校の制服姿に戻ると、どこから見ても男子生徒だ。

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