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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は



「ひっ……」

「葉桐さん、木とか武器化出来ないんですか?!」

「出来るけど……」


 怨嗟の数だけ必要になる。おどろおどろしい負の情念を貫いた植物は、生気をまるごと変質されて、二度は使えなくなる。


「ぐす……」

「なつるさん?!」

「まずい、ッ……オレが囮になります。その間に、葉桐さんは何か持ってきて下さい」

「それはダメ!怪我はしなくても、これ、やばいやつ……」


 あの強気ななつるが泣き出していた。ぐにゅぐにゅと乳房を揉みしだいて、腕や首を貪っても、黒い塊は彼女に外傷も与えなければ、着ているものも傷付けない。それでも彼女の落ち着いた目は、着実に色を失くしていく。虚ろな顔は、あの中学生らに似通ってもいた。

 ゆづるが銃を投げ捨てて、塊の群れに飛び込んだ。


「ッ……」


 まるで鯉の池に擲たれた餌だ。

 ねろりとした巨大なアメーバにも見える塊は、疑似的な捕食を重ねながら成長する。成長と分離を繰り返しているところを見ると、元は一体だったのだろう。

 ゆづるに群がる怨嗟達も、吸収した彼の生気で新たな同胞を生み出すまで、おそらく時間の問題だ。

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