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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は


* * * * * * *

 廃ビルの異変を訴えてきたのは、地元の中学校教師だった。

 数日前から、貴校の勤務している学校の制服を着た生徒達が、無人のビルを占拠している。加えて犯罪の疑いもある。

 そう通報を受けた彼女が、他の教師ら数人を連れて現場へ向かうと、豹変した教え子達の常軌を逸した行為に、悪感を覚えさえしたという。年長の教師は青筋を立てて、全員を退学にすると言って叫んだ。しかし彼女を始め他の若い教師らが、彼を止めた。


 この子達は被害者です。専門家の方達がそれを証明して下さったら、今回の件の処分は見送りませんか。



 以上が、椿紗の事務所に寄せられてきた依頼文書の概要だ。


 一週間前、ゆいかはなつると問題のビルを訪ねて、依頼主である教師の推測を裏付けた。

 私怨の歯止めを自ら壊したその物体は、中高生らを貪っていた。人型の黒い塊が、肩や腕にかぶりついて咀嚼しているにも関わらず、本人らは気付いていない。淫らごとに耽ったり、どこからか連れ込んできた他校の生徒に暴行したりしていたのだ。侵食は搾取の対象にも及んでいた。金目のものを根こそぎ強奪されていた、別の制服の女子中学生の太ももにも黒い触手が巻きついた時、なつるがガラスペンをバッグに戻した。


 そして今、再びゆいかはここを訪ねた。なつると、新たな人員としてゆづるを伴ってビルに入ると、例の黒い塊が、彼の頭を鷲掴みにした。

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