
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
席に着くと、改まってすぐるが熱っぽい視線を向けたのは、なずなの頭の天辺から胸下だ。それより下は、テーブルが遮っている。
魔法少女のアルバイトをして、なずなは貯金や仕送り以外に初めて自分で稼いで得た収入で、ゆいかを誘って買い物に出かけた。それまで与えられる一方だったなずなは生まれ変わった心地がしたし、それが当然になっているゆいかも眩しく見えた。
憧れる女はあちこちにいる。中でもゆいかが別格なのは、やはり恋人との対等な関係が、なずなに強い印象を残したからか。
そんな憧れのゆいかの行きつけだという店でも、なずなは数着の洋服を新調した。
甘いディテールの詰まった絵本に出てくる衣装のようなAngelic Prettyとはまた違う、彼女の好むEmily Temple Cuteは、フリルやレースは控えめで、中にはアウトドアも出来そうにシンプルなラインナップもある。それでいて、時には人形、時には姫君、時には皇子──…着る者の素顔を主張せず、且つ物語性の強いデザインに、なずなの胸奥も呼応した。
今日なずなが着ているのは、大きなドットリボンのワッペンが大きく入ったプルオーバーに、綿レースが段状にあしらってある、下着のようなショートパンツだ。ここまでシンプルなものを着たのは高校の制服以来だが、同じアイテムを取り入れていた店員のコーディネートと、肩口の大胆なフリルに惹かれた。
