
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
「んっと……寿司?」
「お寿司っ?」
「嫌いだっけ」
「さっきの魚の魂が……」
すぐるに諧謔を言った様子はなかった。気の弱そうな白い顔に、困惑した気色が浮かぶ。なずなの方が、却って申し訳なくなる。
「あ、大丈夫だよ。すぐるくんがお寿司の気分なら……私も好きだし!」
「嘘」
「ほんとだって」
「なずな」
呆れた調子のすぐるの声が、なずなの鼓膜を刺戟した。
愛する男の一挙一動に肩を強ばらせる自分はおかしい。溢れる好意より先に、畏怖や怯えが先走っては、顔色ばかり伺うなずなは、恋の仕方をどこに忘れて来たのか。
優しい腕が腰を引き寄せるのを感じながら、なずなは今しがたの恐怖を恥じた。
すぐるが呆れたのは、なずなの従順さに対してだった。わがままが言えないならオレが当てる、と彼の言葉が続いた次には、身体が方向転換させられていた。
「ファミレス?」
「デザートメニューが豊富なんだよ。ワッフルだけで五種類。ご飯物がいいなら、惣菜系ワッフルもある」
「…………」
「今日くらいの服なら、歩いてても恥ずかしくないし。オレのためにお洒落してくれてるみたいで、エスコートしてて楽しいよ」
