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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は



「お前またSNSやってんの。マメだな。何の広告だよ」


 茶化したような翔太に些か眉をしかめた龍弥が、スマートフォンを表に向けた。

 液晶画面上では、カラフルで贅沢な写真が陳列した中に、プロモーションと表記の入った広告が入っていた。自殺志願者に向けた相談窓口の案内と、URLが貼られてあった。


「ウザくね?死にたがるやつは、とっくに最善尽くしたわけ。身近な人間も頼りにならなかったようなヤツが、どこの馬の骨かも分かんねーのに、相談するかよ」

「つか、イジメもマジで解決した学校ないのな」

「この間、夫婦で心中したニュースあっただろ。生活保護の審査、落ちたらしいぜ。食う物も介護もどうしようもなくなったって、書き置きがあったって」

「公共機関のくせして殺してんじゃん!」


 大口を開けて笑う龍弥も、別段、イジメの標的や貧困者達に同情しているわけではない。

 気心知れた友人同士、何かしらの話題を共有して、その日その日をやり過ごしていたいだけだ。


 どうしようもない鬱積や、表面上は親身で優しい大人達による束縛への反感。

 子供は保護されている一方で、大人達の玩具でもある。彼らの偽善に報いる恩などないと言わんばかりに、規則に抗い、授業は私語やエスケープをする。

 見た目だけで言えば、ゆづるは彼らのグループには向いていない。伸びかけでも校則が認める範囲内の黒髪に、背が伸びて丈の短くなった制服も、やはり生活指導室に呼ばれる程度に至らない。それでも、ここはゆづるの居場所だ。

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