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副業は魔法少女ッ!

第2章 魔法少女の力




「お疲れ様です」

「あー、ゆいちゃん!出勤だったのね」

「休日出勤です。近所の不良が刃物を持ち出していて、百十番しようとしたら、嫌な感じがして……」

「ええっ、巻き込まれなかった?」

「大丈夫です。遠巻きに、怨嗟だと気付きましたので」

「新人ちゃんなのにさすが。私なんて、初めの内は近付かないと分からなかったわ」

「瓜生先輩の場合、固有魔法で見極められたんでしょう。魔力感知は、今でもほとんど使ってないじゃないですか」


 ゆいか達の会話に割り込んできた声は、ゆづるだ。

 小麦色の肌の彼女は、気の強さを匂わせた、きりりとした目鼻立ちの中にも幼さの名残りがある。肩より短い茶髪を内巻きにした、ガーリーな要素を取り入れながら、着ているものはジーンズ生地のジャケットに、黒いTシャツ、ゆったりとしたくるぶしまで隠れるパンツ。どれもメンズのアイテムだ。


「ゆづるくんは、今から?」

「いいえ、これから他のバイトへ行くので。あ、椿紗さん。これ」


 今しがたゆいかが椿紗に手渡したのとよく似た石が、ゆづるのポケットからも出てきた。

 彼女、いや彼は、それから出入り口まで足を進めたところで振り向いた。

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