
副業は魔法少女ッ!
第2章 魔法少女の力
* * * * * *
「なずなちゃん」
魔力が最大限に引き出る姿からの変身を解いて、ゆいかは彼女の側へ急いだ。
石塀に亀裂の走った裏路地、賑やかな商店街と同様に、かつてはさびれた軒並みも、看板を出していたのだろう。
今しがた怨嗟を封じた石を手前に、なずながへたり込んでいた。
白いパフスリーブ、薔薇を飾ったリボンタイ、ウエストから広がるパラソルを逆さにしたようなスカートは膝上丈にも関わらず、太ももは見事に隠している。幾重ものフリルと短い裾のドロワーズが、まるで人形の貞操を護ってでもいる塩梅だ。
だが、レース地のアームカバーに透けた手首の縄痕や鎖骨付近の青痣、膝から足先にかけての打撲は、見て見ぬ振りにも無理がある。
ゆいかは、青いリングを掲げかけたなずなの左手を押さえた。
彼女が肌の隠れる普段着姿に戻る前に、まず手首の縄痕から、回復の魔力を注ぎ込む──…。
「いやっ……」
なずながゆいかの手を払った。
建物を防御する力も不安定だった。怨嗟を封じるや、酷い疲労にのしかかられるようにして今の体勢になったなずなに、まだこれだけの反射神経が残っていたことに驚く。
「ごめんなさい、傷は治さないで」
「痛いでしょ」
「いつものことだから……。それに、治ってたら、すぐるくんに怒られる……」
なずなの怪我の多くは自宅で負ったものだ。ほとんど、いや、全てと言って良い。
