
副業は魔法少女ッ!
第2章 魔法少女の力
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プロジェクトにおける主要部署の代表者達が顔を揃える定例会がひと段落ついて、各々が会議室を出ていく中、明珠が建設会社の営業担当者を残した。それから彼女は、退室の準備をしていたゆいかも呼び止めた。
「お世話になります、槙原さん」
「お疲れ様です、葉桐さん」
他社から出張に来た槙原とは、ゆいかも既に面識がある。四十代後半くらいの、いかにも嬋娟で優しげな彼女は、明珠とはまた違った種類の気品を身にまとっている。
「ゆいかには率直な意見が聞きたい。収益や効率は関係なしに、もしお客様として利用するなら、どこを改善すべきかな。貴女くらいの女性が主なターゲットだから、主観で頼むわ」
今しがたの会議でも開示のあった図案は、ほど良く都会を離れた立地に相応しい、優雅で大規模な複合施設だ。郊外でも交通の便は良好で、近辺に宿泊施設が少ないことからも、かなりの収益が見込めるという。
「このテラス席にパラソルは付く予定ですか?」
「いいえ、イメージのままです。屋内スペースもありますから、お客様にはお好きな方を選んでいただけたらと」
「でしたら、屋内スペースをもう少し広げるか、パラソルがあった方がいいと思います。美容に関心のある人ですと、日中は直射日光を気にして野外は敷居が高いでしょう。雨だと更に屋内の方に客足が偏って、落ち着いて過ごしにくくもなるかと……」
「やっぱりね、そこは私も悩んでた。ちなみに槙原さん、先月の第一案、今お持ちですか」
「はい、こちらに」
