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副業は魔法少女ッ!

第2章 魔法少女の力




 少女がいなくなってから十数年、彼女と椿紗は何度、この問答を繰り返したか。今でこそ予知能力を備えたなつるが、従事しそうな人間の目処をつけて、ルシナメローゼに引き入れてくれる。

 だがそれ以前、人手不足はもっと深刻だった。


 少女とともに暮らした日々が、椿紗の胸を掠めていく。何度出逢っても彼女を愛して、何度出逢っても、時の無情に引き裂かれる。

 彼女が肉体を失くした日、椿紗はルシナメローゼの元住人らの怨嗟に匹儔する無念を持った。むしろ彼らのように漠然としていなかった分、椿紗のいだいた具体的な悲嘆、憎悪、やるせなさが、この世の全てを焼き尽くさなかったのが不思議なくらいだ。


 失いたくなかっただけだ。


 当然のように手に入れたものを当然のように持っていたいと願うのは、そうも贅沢なことか。



「私も──…会いたいわよ、──…」


 当たり前に呼んでいた少女の名前を囁くと、それだけで椿紗の胸を、優しいものが満ち溢れる。それと同時に黒いものも。


「愛してる。友達に対する言葉じゃないかも知れないけど、一生をかけても貴女との再会を叶えるつもりでいるんだから、愛情と言っていいわよね?」


 声の主の笑った気配が、風に乗って椿紗にじゃれついた。

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