
副業は魔法少女ッ!
第8章 正義の味方のいないご時世
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どこかで、違和感が起きた。
この感覚に覚えがある。魔法少女のアルバイトをしていた頃、なずなは、ごく稀に小さな異変を察知していた。時空が揺らぐ類のものではなく、感覚的なと言うべきか。
食事会を投げ出してきて、なずなはなつるの部屋に泊まった。二度目の日暮れが近い今、あれからまもなくまる一日経つ。
彼女への返事は、見送っている。彼女は、過去にもなずなに好意を伝えてきたことがあった。なずなはそれらを、仕事の先輩が後輩に向ける感情だと受け取っていた。両親達から自分を連れ去った彼女の行動、言葉つきから、ようやく愛を意味していたのだと知った。
いや、鈍感を装っていただけだ。
なずなはゆいかが好きだった。菫子の魔法にかかっていながら、本心はゆいかに傾いていた。彼女がなずなのものになるはずなくても。
そのゆいかの気配が、消えた。
「なつるさん、最近、グループLINE見てますか?」
昨夜も、なずなはゆいかと話していた。彼女と過ごすために翌日の業務を休むと決めた明珠を心配しながら、その実、浮足立つ彼女の気持ちが、文面から伝わってきた。なつるに告白されたこと、両親から嵐のように着信が入っているのに怖くて無視していること、それらを相談し損ねたまま、今日はデートの邪魔をしないと決めていた。
今、メッセージを送るくらいなら、邪魔にならないだろうか。…………
「なつるさん?」
胸のざわつきが、つと、風に連れ去られるようにして消えた。
それより、やはりどこかで魔法が生じた感じがある。
