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副業は魔法少女ッ!

第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世


 なずなの帰りが遅れると、悪い可能性ばかり頭を巡る。彼とは共通点のない友人達との親交は、ただでさえ大学の離れた互いの距離を、嫌でも実感させてくる。

 そうした不安を並べたあと、今日もすぐるは、なずなの服装に言及する。

 そんな目立つ格好をして何になるのか。心に決めた男がいるのに、何故、外を歩く際にそこまで化粧するのか。そんな髪の色を好みと言った覚えはない。…………

 なずながロリィタファッションを貫くのは、読書好きが本を集めたり、農園好きが自家栽培したりするのと同じだ。個人の時間を充実させるためのものに過ぎない。しかしすぐるには理解させることが出来ない。手持ちを全て入れ替えるにはさすがに金がかかるため、まずは髪を直しに行こうという彼の言葉にだけは、首を縦に振れない。


「なずなは、オレの言うことが聞けないの?」

「私は誰かのためにこの格好をしてるんじゃないの。すぐるくん以外の人に良く見せようなんて、考えてないよ。だから──…」

「偉そうな口を利くな!!」

 バゴッ…………


 すぐるの拳がなずなの顎を直撃した。鉄錆の匂いが口内を満たす。

 中より下の器量の女は何を着ても変わらない。弱い女は、どう自我を主張したところで、最後には男の言いなりにならなければ生きてもいけない。


 呪いにも似た罵倒を浴びせながら、すぐるがなずなを粗大ゴミを出す時のように引きずっていく。

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