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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子



「葉桐さんが心に決められたお相手さんなら、尚、我々は尽力します。八神さんには面白くないお話ですが、彼女のところの一色さんには、日頃からお世話になっています。破局は残念ですが、一色さんはあのお人柄ですから……葉桐さんには、十分な生活をさせて差し上げられる方とお付き合いされることを願っていらっしゃると思いますから」

「いやぁ、来年卒業かー。これはめいっぱい働いて、さっさと社長にでも何でもならないといけませんね!八神さん!」


 一方的に盛り上がり、話を進める重役達に、すぐるは反駁しなかった。
 彼の内定は決まっている。なずなから聞いたところによると、出張の多い商社という、恋人を束縛したい彼には地獄も同然の就職先だ。機会さえあれば、条件も給料ももっと贅沢を言える会社に移りたいのだろう。


 パーティーのあと、ゆいかは二次会会場とは別方向の港へすぐるを誘った。近くにはホテルやバーがあり、それらの灯りと街灯の光を弾く海面とが、まるでひっくり返した宝石箱の絵を織りなす。恋人同士や家族連れの賑やかなざわめきの中、すぐるの声がゆいかにかかった。


「あいつに聞いたのか。オレが内定先に不満があること」

「そういう言い方じゃなかったけどね」

「同情なら、利用させてもらっていいんだな」

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