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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子




 夜が明けて、世界の仕切りが剥がれても夢見心地のままでいられたら、どれだけ良いか。
 貴女さえいれば何もいらない。
 ありきたりな文句を有言実行出来る人間は、きっとひと握りいるかいないかだ。恋人がいて、そのために友人を蔑ろにする女など、所詮はテレビや小説の中にのみいる創作物だ。


 八神すぐるにゆいかが何度目かの接触を試みたのは、十二月に入った頭だ。

 なずなに手を上げれば近くの棚から物が落ちたり、彼自身が空振りして怪我を負ったりする。そうしたアクシデントが増えたこともあって、あの初夏の一件以来、大きな行動制限はかからなかったにしても、彼女の傷が、片手で数えられる程度にまで減った試しはない。

 なずなの両親は、外面だけは優れた男に、頓珍漢な信頼を寄せている。その外面の完成度がどれほどか、とっくに本性を知ったゆいかは、それまで確かめる術がなかった。

 そこでなつるの固有魔法の助けを借りて、ゆいかは彼の講義が終わる時間を割り出すと、その校門前で待ち伏せた。

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