
副業は魔法少女ッ!
第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世
「気性の荒い人間?」
「何かあったのかな。私、ニュースとかあまり見ないから、分からないよ……」
「お前はバカだからな。そいつも大した占い師じゃない。こんな、何の参考にもならないバカに訊くくらいだからな。お前も、そんな他人かオレとの約束、どっちが大事だ?!」
「ヒャァッ……」
視界を閃光が走った。
実際は、ゆずるの両手がなずなの頭を掴んだだけだ。
色白の肌に細い目、低い鼻──…ゆずるの顔は、まるで陽当たりの悪い場所に育った花だ。それでいて成人男性に備わる最低限の筋力が、彼にもある。
ゆずるはなずなの頭をソファめがけて投げつけた。
ごめんね、ごめんね。
酷い動悸に追い立てられて、なずなは唇だけ糸に繋がれた操り人形のように繰り返す。そこにすぐるが跨って、二つに結った一方の髪を掴んで唇を塞ぐ。
「なずな……愛してる、オレにはお前しかいないんだ。お前なんか、オレがいなければ誰からも相手にされないんだぞ」
こめかみから滑らせてきた手が顎に触れるや、すぐるはなずなの唇をじゅるじゅると吸った。歯茎にまで響く指圧になずなが顔を歪めていると、彼がようやく腰を上げた。
「尻を出せ」
「っ、はぁ……」
「早くしろ!!」
すぐるは竹棒を持ち出していた。
なずなは床に膝をついて、スカートをたくし上げる。何が始まるかは身に覚えがある。
ひゅん、と、頭を掠めたそよ風が、なずなにすぐるが竹棒を振り上げたのを知らせた。
