
副業は魔法少女ッ!
第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世
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友穂達と解散したあと、一時間半かかって帰宅したなずなに、八神すぐるはスマートフォンを出せと命じた。
「どこをほっつき歩いていたの?」
「今日は友穂ちゃん達とイベントに──…」
「分かってるよ、そんなこと!!オレを舐めてるな?!」
なずながスマートフォンを出しきるのも待てないと言わんばかりに、ゆずるがそれをひったくった。幼馴染から恋人になった同棲相手は、慣れた手つきで暗証番号を打ち込んで、ピンクゴールドの機体を操作する。
イベント会場からの帰路は、電車の遅延がない限り、一時間だ。
あと三十分はどこで何をしていたか。LINEやインターネットアプリをこと細かに調べながら、ぶつぶつと何か呟いている。
「遅くなってごめんね。道で女の人に声をかけられて。質問に答えていたら遅くなったの。ごめんね」
「女……?」
なずなは頷く。
故意に寄り道などしていないのは、本当だ。
学業とアルバイトを両立しているゆずるは、自由に使える時間が少ない。それなのに、今日はなずなに友人達との予定を優先させてくれた。せめて今夜は、残すところ数時間を彼に使うと決めていた。あのあと立ち話もしないで、予定通りの電車に乗った。だが、最寄駅からここまでの道中、なずなは不思議な女に出逢った。
占い師らしかった。そうと判断出来る小道具は携えていなかったが、直感的にそうだと思った。最近変わったことはないか、身辺に気性の荒い人間はいないか、やたら女は確かめたがった。
