
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
「たくさん隠し事してごめん。仕事は、ちゃんと田中さん達に引き継ぐ準備してた。でも明珠にお別れは、言えなかった。明珠と一緒にいられなくなるなんて、考えたくなかった。それに、治らないような持病が再発したなんて話をしたら、幸せが消えるんじゃないかって……。明珠が好きって言ってくれて、毎日幸せだったの。魔法みたいに、一瞬で解けちゃうなんて、イヤだったんだ」
「ゆいか……」
舞踏会にいたシンデレラもこんな思いだったのだろうかと思う。身の丈に合わないドレスを着て、奇跡のような城の中で、本来なら手も届かなかった王子と束の間を過ごした彼女は、彼女自身の偽りに、どれだけ怯えて苦しんだのか。
ガラスの靴は泡沫だ。あのなずなと同様、ゆいかのそれも、ずるく制限付きだった。
明珠の指が、ゆいかの指と指の隙間を埋めた。
会社やサークル帰りの客達で賑わう飲食店街は、浮かれた笑顔が散らばっている。いつ消えるかも分からない夢を、誰もががむしゃらに貪るからか。
「私の方こそ気付けなくてごめん、ゆいか」
「…………」
「無理して頑張ってくれてたんだね。言いづらい空気にしていたの、私だね、きっと。少しでも一緒にいたいからって、ちゃんと休ませられなかったし、体調だって良くなかったよね、気遣えなかった。ゆいかをちゃんと見てるつもりで、見惚れていただけだった」
