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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は


「まぁ、オレも十代の頃はヤンチャしたし、お前達も楽しいよな……。もう二十歳なのに、大人気なかったよ」

「いいよ、お兄さん。彼女庇ってウチらに本気になるなんて、漢じゃん」

「でしょ、彼、カッコイイんだ。でも私は貴女が羨ましい。私が高校生だった頃は、こんなに友達いなかった」


 傍観していた大人達の難解な目が、若者達に向いていた。一方で、被害を受けた運転手らは、苛立たしげに警察の到着を待っている。
 どちらにしても、彼らに変身した魔法少女の姿は見えない。公共物の破損を始め、今の騒動でさえ、歴史の教科書にもないような古代住民の怨嗟が引き起こしたものだろうとは、よほどのオカルト好きでなければ想像しない。



 これから事情聴取や損害賠償の対象になる若者達に同情しながら、彼らがパトカーに連れられていくのを見届けると、ゆいかは明珠の魔力を辿って、百貨店の裏手に向かった。


 暗い小路で、既に明珠はスーツ姿に戻っていた。

 西洋風の貴族的な装束の彼女も目を瞠るほどに眩しかったが、変身すれば髪の長さに差分が見られるタイプなのだろう、あの巻き毛の再現は今は難しいようなミディアムの黒髪も引き立て役になる芸術的な風貌が、逆光の薄闇を相殺している。


「魔法少女だったの……?」


 第一声、あらゆる疑問を集約すれば、それに尽きた。

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