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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は



 魔法少女であれば本来、ここは怨嗟と戦うべきだ。

 警察や医師が到着しても、火に油を注ぐだけだろう。

 現時点では対価の影響の見られないなずなにLINEを送って、ゆいかは明珠が救助を呼びに行くまでの間、現場近くに留まることにした。


 外は、瘴気が充満している。あの若者達は、ルシナメローゼの怨嗟に憑かれていた。ここまで離れたゆいかに手を出してくることはないにしても、明珠がもし魔法少女なら、安全を考えれば車内にいようと判断しただろう。

 だが、彼女がそうしなかった意図を、ゆいかは直営のエステサロンへ行かなかったために知ることになる。


「え……」


 なずなとは違う、なつるとも違う魔力の波紋が押し寄せてきた。

 目を凝らすと、現場に現れていたのは、純白にダイヤモンドの煌めきを撒く星飾りを散らした衣装を付けた女だ。目も眩むようなドレスとは対照的に、黒曜石の艶を湛えた黒髪は、綺麗に螺旋を描いて片側の耳元にまとまって落ち着いている。

 ひと目で彼女が魔法少女であると理解した。が、その正体が、ゆいかにあまりに親しい女であると納得するには、時間も余裕も乏しすぎた。暮れかけの空色を映す彼女のドレスは、角度次第で群青にも桃色にも見えて、その優雅な身のこなしに合わせて、薄手のフレアスカートが踊るように舞う。

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