
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
翌日。
ゆいかが部署に顔を出すと、真後ろに、息を切らせた田中が駆け込んできた。
「おはようございます、田中さん。ご迷惑おかけしました」
「あ、ゆいちゃん。それはいいんだけどね、社長がご心配だったわよ」
「そうですか……」
「こっちにはメールやチャットで資料送ったりしてくれていたから、一色さんとも当然、連絡取っていたものだと思っていたわ。何かあった?」
ゆいかの瞥見した先にいる一同は、朝礼間際の僅かな余暇を啄みながら、明らかに聞き耳を立てている。否と返答するにも厳しいし、事実を話すにも同じくらい無理がある。
「ごめんなさい。気持ちの整理が……まだつかないので……」
却って腫れ物扱いを促すような受け答えをした自覚が、この時はなかった。ただ、以後、誰もゆいかに何か追求することもなければ、明珠の話題を出すこと自体が禁忌にでもなった風な空気が続いた。
それは業務に関わる会話の中でも適用されて、ある仕事の指示を出してきた人物だとか、是認を取りたい人物だとか、ゆいかから明珠の名前を出して、いちいち確認する羽目になった。
