
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
なずなが業務で不在の間、ざっとこうした会話のやりとりがあった。
ゆづるが恋人まで亡くしたのを聞いた時から、在籍だけして業務に手をつけなくなったゆいかを、彼女なりに気にかけてくれているのかも知れない。
椿紗は説明不足を謝罪している。謝罪で済まされない問題だが、訴訟しても、こんな話を公的機関が信じるはずない。それに一定数、ゆいかのように、対価に救われた人間もいる。
だがなずなにあの代償が出ていなければ、偶然の不幸に、全員が翻弄されていただけにもなる。
「なずなちゃんの固有魔法は、防御。それが関係している可能性は考えられる。私から無責任なことは言えないけれど、ゆいかちゃんには副業を続けることを勧めるわ」
「再発の可能性もある、って?」
「平均寿命くらい、生きたいでしょ」
「…………」
明珠を愛していなければ、ゆいかの想いはどこに向くのか。彼女を犠牲にしなくても、その対象が変わるだけだ。
「やり残したことがあったから、この数ヶ月は楽しかった。でも、もう分からない。好きな人の夢は見届けたかったけど、寿命を移す方法、教えて下さい。あの時、なつるさんがあたしに分けてくれたみたいに」
「彼女に時間を返すのね。……教えられない。ついでに、私はゆいかちゃんを引き留めるつもり」
なけなしの時間を明珠に返せば、ゆいかはすぐにでもこと切れるだろう。なつるがゆいかの方を慮るのも無理はない。寝屋川達のように癇癪を起こして、力任せに彼女から聞き出すのも気が引けて、椿紗に辞表も出せないまま、ゆいかはこの日は帰路に着いた。
