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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は



「今日は誘ってくれて有り難う」

「ゆいかも、来てくれてありがと。夏休みに旅行でも行きたかったけど……」

「仕方ないよ。他店もあるし、書き入れ時に遠くは行けない」


 客室へ戻るタイミングも、キスの続きをねだる機会も掴めないまま、ゆいかは明珠の声音から徐々に遠ざかっていく甘ったるさを、捕らえて繋ぎ止めたくなる。

 いや、捕らえてはいけない。

 今からすこぶる身勝手な話を始めるのだから。


「ねぇ、明珠」

「ん?」


 
 ソファに座ってスキンケアの瓶を並べる明珠の顔は、それらで手入れした方が肌本来の潤沢が半減するのではと危惧するほど、まばゆい。一点の曇りもないまごころを湛えた双眸が、ゆいかを捉えて決意を揺るがす。

「…………」



 魔法の時間は、終わった。

 ガラスの靴は、いつまでも魔法にかかったままではいられない。



「話がある」

「何」

「別れよう。……別れて」

「何の、話?」

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