
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
和気藹々と完成させた献立に、全員が舌鼓を打った。
初めは遠慮した鈴谷達も食卓に呼んで、彼女らとの談笑に興じていると、砂時計がくびれを失くしたように、瞬く間に夜が更けた。
明珠と交替に入浴を済ませて、日帰りだと馴染み深い彼女の部屋で、ゆいかは彼女の袖を引いて、そのささめきに目蓋を下ろした。
夕餉の重みが、腹の中で後を引いている。それ以上に、今しがた浴室で染み込ませてきた香りに満たされて、それが自分自身か彼女のものか、ゆいかは嗅ぎ分けられなくなっていた。人工的なブーケの香りを強める女の唇が、ゆいかを塞ぐ。
ちゅ。……ちゅ。
小鳥がじゃれ合うのに似たキスを交わしながら、ゆいかは明珠の片手を探って、長い指に自身のそれを絡めながら、どさくさに紛れるようにして、舌先で彼女の唇に触れる。彼女の手首が僅かに顫えた。
「くすぐったい、ゆいか」
「ん、明珠こそ」
キスや抱擁をいくらしても、それ以上の触れ合いをしない。
小説か何かで見知ったような感覚が、腰の奥でゆいかに何か訴えるのに、そのもどかしさからは意識を逸らす。もっとキスをねだりたくても、彼女の手を無意味に握って、指を撫でて、恋を知り始めた少女同然の無垢さを装う。
