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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は


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 風邪を騙って引きこもった時、まるでガラスの靴を手に入れたシンデレラのようだった、と、なずなは自身を振り返っていた。


 命運を超えた幸福は、摂理に背いてこそ得られる。それは、整頓されていたブロックのピースが外れるのと同じことだ。神のさだめを逃れるとともに、加護も失くす。

 つまり彼女にとって、恋人の愛や優しさは、身の丈に合わないものだったのだ。すぐるの可愛い恋人でいるために、彼女は彼に従った。彼は従順というガラスの靴を履いた彼女を二週間、か弱い小動物以上に慈しんだ末、珊瑚のような唇が、そろそろ学校へ行きたいと訴えた途端、化けの皮を自ら剥がした。


 街にまた制服姿の学生達が目立ち出したある日の退社後、ゆいかは明珠の家を訪ねた。家政婦らを除く家族全員が今日は不在で、広い家に、彼女一人が留守を守ることになっていた。


「落ち着かなくてごめんね。鈴谷さんと宮内さんにも休暇を出したかったんだけれど、他に有給を使いたい日があるからって」


「全然。優しそうな家政婦さんだね。明珠は、やっぱり別世界の人だったんだなって」

「そう?」

「家大きくて、家政婦さんまで」

「二世帯だしね。それに、祖父母も両親も共働きで、お姉ちゃん達に関しては、正月くらいしか海外から帰らないから。私も家事力ないし、お願いするしかないでしょ」


 その家族達も、国内に住んでいれば一度は耳にするだろう大手企業の重役や、会社のトップばかりだ。海外で働いている兄姉達は、確かIT関係だったか。

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