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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は


 明日の通夜の時間が確認出来ると、ゆづるは一人、帰路に着いた。


 父親のいる家に戻ろうという気が起きない。

 数少ないよそゆきの服を身につけたまま、ゆづるはランチや買い物に使うはずだった財布を握って、ネットカフェの個室に入った。

 今朝まで話していた少女とのトーク画面をスライドさせては、また鼻の奥がつんとしたところで、久し振りのアカウントから通知が入った。


"お疲れ様です。寝屋川です。佐伯くん、今大丈夫?"


 返信出来る気分ではない。

 身辺の何もかもと関わりを絶って、今にも消え入りそうな余生を、ひよりに向けた懺悔だけでしのぎきりたい。


 だが、ゆづるはフォームに文字を入れた。

 どうせ死ねない。

 であれば、二度と連絡をとる機会もなかったはずのかつてのアルバイト仲間でも、気散じの材料くらいになるだろう。

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