
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
「犯人を滅多刺しにしたいわ。悪人が生きて、どうしてこの子が……。私の娘が何をしたの」
「俺が誘ったりしなければ……」
「もしもの話は、やめて下さい。でも、ごめんなさい、佐伯くん、うう……ひぐ……ぐす……ああああ……」
仏花と線香の匂いに湿らされて、愛娘を亡くした女を視界の端に、ゆづるもなり振り構わなくなった。自身の感情に飲まれて泣くのは、幼少期振りだ。やがて父親が帰宅して、親族らが訪ねてきて、彼らが明日の通夜の話を始めると、ふと、ゆづるはひよりの側で、笙子のことが頭をよぎった。
ひよりはまだ恵まれていた。悲しみに暮れる母親がいて、父親がいる。
だがこの広い家で、どれだけ豪勢な葬儀が行われても、彼女自身は戻らない。
笙子を失くした一ヶ月前、ゆづるの生きる意義は揺らいだ。そうした中でもゆづるを保つ糸が切れなかったのは、ひよりの語った夢同然の未来が残っていたからだ。破格の幸福など望まなかった。人が呆れるほど平凡と呼ぶ、だがゆづるからすればあまりに眩しい、ありふれた暮らしを彼女と共にしたかった。
だが夢は、夢に終わった。ゆづるに染みついていた厄が、きっとひよりに伝染したのだ。
