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副業は魔法少女ッ!

第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世


 明珠の残業が続いた今週、ゆいかは彼女に秘密を作った。

 ドラマの世界でしかありえないだろうと認識していた余命宣告を受けたのは、四日前だ。
 通常、そうしたことは本人の耳に入らないというが、帰宅中、視界に不快なモザイクがかかったゆいかは横断歩道の中途地点で膝を抱えた。近くにいた会社員風の男に診療所まで運ばれて、待合室で、目眩は薄れた。ゆいかが礼も言えないまま、男は帰った。長い検査を受けたあと、ゆいかは家族と同居していないと偽って、その結果を直接聞いた。

 命が残すところ二週間であると事前に知っておけたのは、不幸中の幸いだった。今でなくても出来ると思い込んだことを先延ばしにして、突然、日常がぷつりと途切れたら、後悔してもし足りない。

 あの占い師も、同じことをゆいかに言った。当てずっぽうだったとしても、タイミングが悪かった。

 夕刻が夜に覆われるのも、きっとあっという間だろう。あれから四日が経っている。十日か一週間か、その時がいつ訪れるか分からない。明珠に打ち明けなければいけないのに、それは一年前まで社交的な言葉を交わすのでさえ精一杯だった彼女との幸福に、自ら終止符を打つことになる。彼女のプロジェクトに携われるチームの一員として大した仕事も残さないまま、ゆいかだけがいなくなる。

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