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副業は魔法少女ッ!

第3章 ガラスの靴の正体は



 たとえそうでも寝不足でも、ゆいかは首を縦に振る。

 すると、花が綻んだように笑ったなずなが駅の方角へ足を向けた。


 この感情は何なのか。どこにでもいる少女の姿かたちをした彼女の、当然に持っていなければいけないはずの権利をおびやかす例の男や彼女の家族に、苛立ちでもしているのか。彼らより、自分の方が、彼女のためになることが出来る。

 痛ければ、悲しければ、いつでも連絡を寄越せ。

 数日前、ゆいかはなずなにそう言った。

 彼女は辛さを否定しても正直で、傷が痛めば本当にゆいかに泣きつくようになり、ゆいかの思う悲しみとは違っていても、その感情を覚えれば、彼女は相談してくるようになった。


「ゆいかさん、相談所にでもなるつもり?」


 電車が急ブレーキをかけた時、なずなの諧謔に笑いながら、ゆいかはバランスを崩した彼女を受け止めた。


「…………っ」


 じわり。


 甘く官能的な痺れが体の奥に広がったのは、胸にうずもれたなずなの顔が、いつか明珠と行った小動物カフェで抱いた、あどけないうさぎのぬくもりが、彼女のそれに重なったからだ。

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